留数を求める公式

留数を簡単に計算するパターンとして、次の 3 パターンがあります。

公式[A] 留数を求める基本公式

ひとつめは \(f(z)\) が \(z = z_0\) で単純極を持つ場合です。

1 位の極を特に単純極といいます。

この場合次の計算で留数が得られます。

\[ \begin{aligned} \underset{z = z_0}{\text{Res}} f(z) &= b_1 \\ &= \lim_{z \to z_0} (z - z_0) f(z) \end{aligned} \]

\(f(z)\) が \(z=z_0\) で単純極を持つとすると、ローラン級数は次のようにかけます。

\[ f(z) = \frac{b_1}{z - z_0} + a_0 + a_1 (z - z_0) + \cdots \]

この時の \(b_1\) が留数です。

両辺に \((z-z_0)\) を掛けると、

\[ (z - z_0) f(z) = b_1 + (z - z_0) \{ a_0 + a_1 (z-z_0) + \cdots \} \]

となるので、

\[ \begin{aligned} \lim_{z \to z_0} (z-z_0) f(z) &= \lim_{z \to z_0} \Big[b_1 + (z - z_0) \{ a_0 + a_1 (z-z_0) + \cdots \} \Big] \\ &= b_1 \end{aligned} \]

となります。

公式[B] \(f(z) = \dfrac{p(z)}{q(z)}\) の時

ふたつ目も \(f(z)\) が \(z = z_0\) で単純極をもち、かつ \(f(z) = \dfrac{p(z)}{q(z)}\) の形のときです。

この時は次のようにかけます。

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \underset{z = z_0}{\text{Res}} \frac{p(z)}{q(z)} = \frac{p(z_0)}{q'(z_0)} \]

\(f(z) = \dfrac{p(z)}{q(z)}\) が \(z = z_0\) で単純極を持つとすると、\(q(z_0) = 0\) ですから、\(z_0\) 付近でのテイラー展開は次のようになります。

\[ \begin{aligned} q(z) &= \cancel{q(z_0)} + q'(z_0)(z-z_0) + \frac{q''(z_0)}{2!} (z-z_0)^2 + \cdots \\ &= q'(z_0)(z-z_0) + \frac{q''(z_0)}{2!} (z-z_0)^2 + \cdots \\ &= (z-z_0) \{ q'(z_0) + \frac{q''(z_0)}{2!} (z-z_0) + \cdots \} \end{aligned} \]

よって、上の公式 [A] とから、次が得られます。

\[ \begin{aligned} \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) &= \underset{z=z_0}{\text{Res}} \frac{p(z)}{q(z)} \\ &= \lim_{z \to z_0} (z - z_0) \frac{p(z)}{q(z)} \\ &= \lim_{z \to z_0} \cancel{(z - z_0)} \frac{p(z)}{\cancel{(z-z_0)} \{ q'(z_0) + \frac{q''(z_0)}{2!} (z-z_0) + \cdots \}} \\ &= \lim_{z \to z_0} \frac{p(z)}{q'(z_0) + \frac{q''(z_0)}{2!} (z-z_0) + \cdots } \\ &= \frac{p(z_0)}{q'(z_0)} \end{aligned} \]

公式[C] \(z=z_0\) で \(m\) 位の極を持つ場合

\(f(z)\) が \(z=z_0\) で \(m\) 位の極を持つ場合には次の式が使えます。

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \frac{1}{(m-1)!} \lim_{z \to z_0} \frac{d^{m-1}}{dz^{m-1}} \{(z-z_0)^m f(z)\} \]

\(m=1\) の時は上の公式 [A] になります。

さて、これも導いておきましょう。

\(f(z)\) が \(z=z_0\) で \(m\) 位の極を持つので、\(f(z)\) のローラン展開は次のようにかけます。

\[ \begin{aligned} f(z) &= \frac{b_m}{(z-z_0)^m} + \frac{b_{m-1}}{(z-z_0)^{m-1}} + \cdots + \frac{b_1}{z-z_0}\\ &+ a_0 + a_1 (z - z_0) + \frac{a_2}{2!} (z-z_0)^2 + \cdots \end{aligned} \]

両辺に \((z-z_0)^m\) を掛けると、次のようになります。

\[ \begin{aligned} (z-z_0)^{m} f(z) &= b_m + b_{m-1}(z-z_0) + \cdots + b_1 (z-z_0)^{m-1}\\ &+ a_0 (z-z_0)^m + a_1 (z-z_0)^{m+1} + \cdots \end{aligned} \]

\(f(z)\) の留数は \(b_1\) ですから、これによって \((z-z_0)^{m-1}\) の係数が \(f(z)\) の留数である、 ということがわかりました。

一方、\(g(z) = (z-z_0)^m f(z)\) とおくと \(g(z)\) は正則で、\(z=z_0\) 付近でのテイラー展開は次のようになります。

\[ \begin{aligned} g(z) &= g(z_0) + g'(z_0) (z-z_0) + \cdots \\ &+ \underbrace{ \frac{g^{(m-1)}(z_0)}{(m-1)!} }_{ (z-z_0)^{m-1} \text{の係数はコレ}} (z-z_0)^{m-1} + \frac{g^{(m)}(z_0)}{m!} (z-z_0)^m + \cdots \end{aligned} \]

テイラー展開の一意性から、こちらの級数の \((z-z_0)^{m-1}\) の係数と比較できて、結局次が \(f(z)\) の留数になります。

\[ b_1 = \frac{g^{(m-1)}(z_0)}{(m-1)!} \]

\(g(z)\) を \(f(z)\) で書き直せば、次のとおり。

\[ \frac{g^{(m-1)}(z_0)}{(m-1)!} = \frac{1}{(m-1)!} \frac{d^{(m-1)}}{dz^{(m-1)}} \{(z-z_0)^{m} f(z) \} \]

よって、次式を得ます。

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \frac{1}{(m-1)!} \lim_{z \to z_0} \frac{d^{(m-1)}}{dz^{(m-1)}} \{(z-z_0)^m f(z)\} \]

\(m\) に具体的な数字を入れて様子をみておきましょう。

\(m=2\) のとき:

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \lim_{z \to z_0} \frac{d}{dz} \{(z-z_0)^2 f(z)\} \]

\(m=3\) のとき:

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \frac{1}{2!} \lim_{z \to z_0} \frac{d^{2}}{dz^{2}} \{(z-z_0)^3 f(z)\} \]

\(m=4\) のとき:

\[ \underset{z=z_0}{\text{Res}} f(z) = \frac{1}{3!} \lim_{z \to z_0} \frac{d^{3}}{dz^{3}} \{(z-z_0)^4 f(z)\} \]

\((z-z_0)^m f(z)\) の部分は、上で出てきた \(g(z)\) です。これは \(f(z)\) が \(z=z_0\) で \(m\) 位の極を持つことから、 \(f(z) = \dfrac{g(z)}{(z-z_0)^m}\) となることからきてます。(一応書くと、このとき \(g(z_0) \ne 0\) )


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