逆三角関数の導関数

逆三角関数は \(\arcsin x\)、\(\arccos x\)、 \(\arctan x\) です。 これらの微分公式は次の通りです。

\[ \begin{aligned} ( \arctan x )' &= \frac{1}{x^2 + 1} \\ ( \arcsin x)' &= \frac{1}{\sqrt{1 - x^2}} \\ ( \arccos x)' &= - \frac{1}{\sqrt{1 - x^2}} \\ \end{aligned} \]

このページではこうした逆三角関数の導関数を導きます。

\(\arctan x\) の導関数

\(y = \arctan x\) を微分しましょう。

\[ \begin{aligned} y &= \arctan x \\ \tan y &= x \end{aligned} \]

両辺を \(x\) で微分します。

\[ \begin{aligned} \frac{d}{dy} \tan y \frac{dy}{dx} &= (x)'\\ \Big(\frac{1}{\cos^2 y}\Big) \frac{dy}{dx} &= 1 \end{aligned} \]

ここで \(\displaystyle\frac{dy}{dx}\) は今求めようとしている \(y'\) のことですね。従ってこれは、次のようになります。

\[ \begin{aligned} \Big(\frac{1}{\cos^2 y}\Big) y' &= 1\\ y' &= \cos^2 y \end{aligned} \]

ここで、\(\ \tan^2 x + 1 = 1/\cos^2 x\) を使うと次となります。

\[ \begin{aligned} y' &= \frac{1}{\tan^2 y + 1} \end{aligned} \]

\(\ \tan^2 x + 1 = 1/\cos^2 x\) も復習しておきましょう。

\[ \begin{aligned} \sin^2 x + \cos^2 x &= 1 \\ \frac{\sin^2 x}{\cos^2 x} + \frac{\cos^2 x}{\cos^2 x} &= \frac{1}{\cos^2 x}\\ \tan^2 x + 1 &= \frac{1}{\cos^2 x} \end{aligned} \]

ここで \(y = \arctan x\) から直ちに \(x = \tan y\) でしたから結局、次となります。

\[ \begin{aligned} y' &= \frac{1}{\tan^2 y + 1}\\ &= \frac{1}{x^2 + 1} \end{aligned} \]

\(\arcsin x\) の導関数

\(y = \arcsin x\) の導関数を導きます。

\[ \begin{aligned} y &= \arcsin x\\ \sin y &= x\\ \cos y \cdot \frac{dy}{dx} &= 1\\ y' &= \frac{1}{\cos y}\\ &= \frac{1}{\sqrt{1 - \sin^2 y}}\\ &= \frac{1}{\sqrt{1 - x^2}} \qquad ( x \ne 1 ) \end{aligned} \]

主値は \( -\displaystyle\frac{\pi}{2} \le y \le \displaystyle\frac{\pi}{2}\) なので、 \(\cos y \gt 0\) であることから、\(\sin^2 y + \cos^2 y = 1\) より \( \cos y = \sqrt{ 1 - \sin^2 y } = \sqrt{ 1 - x^2 }\) です。

\(\arccos x\) の導関数

\(y = \arccos x\) の導関数を導きます。

\[ \begin{aligned} y &= \arccos x\\ \cos y &= x\\ -\sin y \cdot \frac{dy}{dx} &= 1\\ y' &= - \frac{1}{\sin y}\\ &= - \frac{1}{\sqrt{1 - x^2}} \qquad ( x \ne 1 ) \end{aligned} \]

主値が \( 0 \le y \le \pi\) なので \(\sin y \ge 0 \) であることから、 \( \cos^2 y + \sin^2 y = 1\) より \( \sin y = \sqrt{ 1 - \cos^2 y} = \sqrt{ 1 - x^2} \) です。

導関数は覚えた方がいいの?

微分するときはこのように気合でいろいろと導けてどうにかなることも多いですが、 ある程度結果を覚えておかないと、積分する時に困ることがあります。

例えば、次の不定積分を求める場合を考えてみましょう。

\[ \int \frac{1}{x^2 + 3} dx \]

パッとみて、「なんとなく \(\arctan x\) の導関数に近いぞ」という感覚がないと、次のように変形しようとは思わないでしょう。

\[ \begin{aligned} \int \frac{1}{x^2 + 3} dx &= \int \frac{1}{3} \cdot \frac{1}{\Big(\displaystyle\frac{x}{\sqrt{3}}\Big)^2 + 1} dx\\ &= \frac{1}{3} \int \frac{1}{\Big(\displaystyle\frac{x}{\sqrt{3}}\Big)^2 + 1} dx \end{aligned} \]

ここで \(u = x/\sqrt{3}\) とおくと、\(du/dx = 1/\sqrt{3}\) ですから、次のように変形できます。

\[ \begin{aligned} \frac{1}{3} \int \frac{1}{\Big(\displaystyle\frac{x}{\sqrt{3}}\Big)^2 + 1} dx &= \frac{1}{3} \int \frac{1}{u^2 + 1} \cdot \sqrt{3} du\\ &= \frac{1}{\sqrt{3}} \int \frac{1}{u^2 + 1} du \end{aligned} \]

上でみてきたように \((\arctan x)' = 1/(x^2 + 1)\) です。つまり \(1/(x^2 + 1)\) の原始関数は \(\arctan x\) ですから、次となります。

\[ \begin{aligned} \frac{1}{\sqrt{3}} \int \frac{1}{u^2 + 1} du &= \frac{1}{\sqrt{3}} \arctan u + C\\ &= \frac{1}{\sqrt{3}} \arctan\frac{x}{\sqrt{3}} + C \end{aligned} \]

ここで \(C\) は積分定数です。以上の計算で結局、

\[ \int \frac{1}{x^2 + 3} dx = \frac{1}{\sqrt{3}} \arctan\frac{x}{\sqrt{3}} + C \]

とわかりました。この流れで \(\arctan x\) の導関数を少しは覚えておかないと、上記の変形をして結果にたどり着くのは難しいと思います。

以上、逆三角関数の導関数について説明しました。

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