ε-δ 論法による極限

微分では極限値を考えるときに、「コレコレを無限に小さく」とか「無限にナントカに近付けた場合」という風なことを考えます。

しかし、エイヤッと「無限に」小さくしてみた、とか、「無限に」エイヤッと近付けたりしてみた、というのでは話が荒っぽくなってしまいます。

そこで、より厳密に極限値を考えるために、ε-δ 論法というのを使います。

ε-δ 論法は 19世紀のドイツの数学者 カール・ワイエルシュトラスによって考案されました。

ε はイプシロン。δ はデルタです。

ε-δ 論法での極限値

ε-δ 論法ではlimxaf(x)=L\displaystyle{\lim_{x \to a}f(x) = L} のことを次のように定義します。

もし xa<δ|x-a| < \delta ならば、任意の ϵ\epsilonf(x)L<ϵ|f(x) - L| \lt \epsilon となる、というような δ\delta を見つけられるのであれば f(x)f(x)xax \to a の極限値は LL である

ちなみに、点 x=ax = af(x)f(x) が定義されている必要はありません。

「点 x=ax = af(x)f(x) が定義されている必要はありません」ということはどういうことでしょうか。 例えば次の関数 f(x)f(x) を考えてみましょう。

f(x)=sin(x)x f(x) = \frac{\sin (x)}{x}

この関数は x=0x = 0 とすると分母が 00 になるので、x=0x=0 では定義されていません。しかし、 limx0f(x)\displaystyle\lim_{x \to 0} f(x) という極限値を考えることはできる、ということです。

任意の ϵ\epsilon というと何をイメージするか分かりにくいですね。ϵ\epsilon については、 「どんなに小さな ϵ\epsilon を考えても」という風に考えておけば良いです。

ですから上の極限の定義を、もう少し噛み砕くと、

どんなに小さな任意の ϵ\epsilon を考えても、xa<δ|x-a| < \delta ならば f(x)L<ϵ|f(x) - L| \lt \epsilon になるような δ\delta があるなら limxaf(x)=L\displaystyle{\lim_{x \to a} f(x) = L} である

ということです。

あれやこれやと言い換えて、もとの定義から遠ざかっても良くないので、具体的に問題を解いて理解を深めましょう。

問題 ϵδ\epsilon-\delta 法で limx3(2x1)=5\displaystyle{\lim_{x \to 3}(2x-1)} = 5 を証明せよ。

ここでは評価する関数 f(x)=2x1f(x) = 2x - 1 です。これはグラフを書くと下図のような直線のグラフになります。

δ\delta をどのようにとれば (2x1)5<ϵ| (2x - 1) - 5 | \lt \epsilon となるか考えるのですね。

解き方 0<x3<δ0 \lt |x - 3| \lt \delta ならば、

(2x1)5=2x6=2(x3)=2x3=2x3<2δ \begin{aligned} | (2x - 1) - 5| &= |2x - 6|\\ &= | 2(x - 3)|\\ &= |2| |x - 3|\\ &= 2 |x-3|\\ &\lt 2 \delta \end{aligned}

よって、これが ϵ\epsilon より小さいので

2δ<ϵ 2 \delta \lt \epsilon

すなわち、

δ<ϵ2 \delta < \frac{\epsilon}{2}

となる δ\delta をとれば、(2x1)5<ϵ| (2x - 1) - 5 | \lt \epsilon を満たす。

従って limx3(2x1)=5\displaystyle{\lim_{x \to 3}(2x-1)} = 5 である。

解答の意味を念のためもう一度みておきます。

もう一度同じ図をみてください。

ここでは ϵ=1\epsilon = 1 として図を描いています。すると、確かに δ=ϵ2=0.5\delta = \displaystyle{\frac{\epsilon}{2}} = 0.5 として、 x=3±0.5x = 3 \pm 0.5 の範囲では、極限値 55 から ϵ=1\epsilon = 1 ほども離れていない値をとることがわかりますね。

x+x \to +\infty のときの極限については 「ε-δ 論法による極限 (x → ∞)」をみてください。 考え方は一緒ですが、ちょっと違います。

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