未定係数法で非同次微分方程式の特殊解を求める方法

未定係数法とは

2階非同次線形微分方程式の基本的な解き方」でみたように、 非同次微分方程式の一般解は、同次式の一般解 \(y_h\) と非同次式の特殊解 \(y_p\) の和として求められます。

このため、特殊解 \(y_p\) をどうにかして見つけることが重要になります。

未定係数法 (method of undetermined coefficients) というのは、非同次微分方程式の特殊解を見つける方法の一つです。 未定係数法が適用できる状況は限定的ではありますが、うまくいけばとても簡単に特殊解を見つけることが可能となります。

ここでは、未定係数法を用いて、2階非同次線形微分方程式の特殊解を見つける方法について説明します。

尚、最終的に微分方程式を解くことを念頭におき、同次式の一般解 (基本解) との関連についても説明します。

未定係数法で特殊解を求める方法

ここでは、次の2階非同次線形微分方程式、

\[ y''+p(t)y'+q(t)y=r(t) \]

の特殊解を、未定係数法で求める方法を、具体的な例でみていきましょう。

\(r(t)\) が指数関数の場合

まずは \(r(t)\) が指数関数の場合を考えましょう。

次の例を見てください。

\[ y'' - 2y' - 3y = 3e^{2t} \]

まずは対応する同次式 \(y'' - 2y' - 3y = 0\) の一般解を求めておきましょう。

特性方程式が \(\lambda^2 - 2\lambda - 3 = 0\) で、これは \((\lambda + 1)(\lambda - 3) = 0\) と因数分解できるので、 この特性方程式は \(\lambda = -1, 3\) の異なる2実根を持ちます。

したがって、同次方程式の一般解は \(y_h = C_1 e^{-t} + C_2 e^{3t}\) であるとわかります。

さて、特殊解を考えましょう。

元の非同次式の右辺は、\(3e^{2t}\) となっています。 未定係数法では、指数関数の部分が同じで係数が違う (ここでは \(A\) とします) \(y = A e^{2t}\) を考えます。

もし、元の非同次式を満たすように \(A\) が決められれば、特殊解がわかったことになります。

\(y' = 2A e^{2t}\)、 \(y'' = 4A e^{2t}\) です。

これを左辺に代入すると、

\[ \begin{aligned} y'' - 2y' - 3y &= 4A e^{2t} - 4A e^{2t} - 3A e^{2t}\\ &= -3A e^{2t} \end{aligned} \]

となりますから、\(A = -1\) ならば、 \(y''-2y'-3y=3e^{2t}\) を満たします。

すなわち、\(y = A e^{2t}\) で \(A = -1\) とした \(y = -e^{2t}\) は、与えられた同次微分方程式を満たすので特殊解です。

以上から、同次式の一般解 \(y_h = C_1 e^{-t} + C_2 e^{3t}\) と、非同次式の特殊解 \(y_p = -e^{2t}\) を足し合わせた、

\[ \begin{aligned} y &= y_h + y_p\\ &= C_1 e^{-t} + C_2 e^{3t} - e^{2t} \end{aligned}\]

が、非同次式の一般解となります。

尚、もし \(r(t)\) の指数関数部分が \(y_h\) の基本解、すなわち今回の場合、 \(e^{-t}\) や \(e^{3t}\) と同じ場合は、\(t\) を掛けた関数を特殊解の候補として考えます。 例えば、\(r(t) = 3 e^{-t}\) ならば、 \(y = Ate^{-t}\) を特殊解と想定して \(A\) を定めます。

\(r(t)\) が \(\sin at\) や \(\cos at\) の場合

次に \(r(t)\) が \(\sin at\) や \(\cos at\) の場合を考えましょう。

次の例を見てください。

\[ y'' + 2y' + 5y = 3 \sin 2t \]

まずは、同次式の一般解を求めます。

非同次式の一般解を求めるための特殊解は、同次式の基本解と線型独立なものを選ぶ必要があるためです。

同次式 \(y'' + 2y' + 5y = 0\) の特性方程式 \(\lambda^2 + 2 \lambda + 5 = 0\) を解くと、

\[ \begin{aligned} \lambda &= \frac{-2 \pm \sqrt{4 - 20}}{2}\\ &= \frac{-2 \pm \sqrt{-16}}{2}\\ &= \frac{-2 \pm 4 i}{2}\\ &= -1 \pm 2i \end{aligned} \]

従って、同次式の一般解は \(y_h = C_1 e^{-t} \sin 2t + C_2 e^{-t} \cos 2t\) です。

さて、元の非同次式の右辺 \(r(t)\) は \(3 \sin 2t\) です。

この場合、未定係数法では、推測される特殊解として \(y = A \sin 2t + B \cos 2t\) とおきます。 元の非同次式を満たすように \(A\) と \(B\) を決めることができれば良いことになります。

\[ y = A \sin 2t + B \cos 2t \]

ならば、

\[ y' = 2A \cos 2t - 2B \sin 2t\\ y'' = -4A \sin 2t - 4B \cos 2t \]

ですから、元の微分方程式にこれらを代入して整理すると、

\[ \begin{aligned} y'' + 2y' + 5y &= -4A \sin 2t - 4B \cos 2t \\ &+ 2 (2A \cos 2t - 2B \sin 2t) \\ &+ 5 (A \sin 2t + B \cos 2t)\\ &= (A-4B) \sin 2t + (4A + B) \cos 2t \end{aligned} \]

これが \(3 \sin 2t\) に等しくなるには

\[ A - 4B = 3 \\ 4A + B = 0 \]

したがって、\(A = \cfrac{3}{17}\)、 \(B=-\cfrac{12}{17}\) が求まります。すなわち、特殊解 \(y_p\) は

\[ y_p = \frac{3}{17} \sin 2t - \frac{12}{17} \cos 2t \]

以上から、非同次微分方程式の一般解は \(y = y_h + y_p\) から

\[ \begin{aligned} y = &C_1 e^{-t} \sin 2t + C_2 e^{-t} \cos 2t \\ &+\frac{3}{17} \sin 2t - \frac{12}{17} \cos 2t \end{aligned} \]

であることがわかります。

\(r(t)\) が多項式 \(a_0 t^{n} + a_1 t^{n-1} + \cdots\) の場合

\(r(t)\) が多項式 \(a_0 t^{n} + a_1 t^{n-1} + \cdots\) の場合を考えましょう。

次の例を見てください。

\[ y'' - 2y' + 5y = 5t^2 \]

まずは対応する同次式 \(y'' - 2y' + 5y = 0\) の一般解を求めましょう。

特性方程式が \(\lambda^2 - 2 \lambda + 5 = 0\) であることから、 \(\lambda = 1 \pm 2i\) です。

したがって、同次式の一般解 \(y_h\) は \(y_h = C_1 e^t \sin 2t + C_2 e^t \cos 2t\) です。

さて、特殊解について考えましょう。

未定係数法で、\(r(t) = a_0 t^{n} + a_1 t^{n-1} + \cdots \) の場合、 特殊解は \(y = A_0 t^{n} + A_1 t^{n-1} + \cdots + A_n \) と推測します。

この例では \(r(t) = 5 t^{2}\) ですから、特殊解を \(y = a t^2 + b t + c\) と推測します。

\(y'=2ax + b\)、 \(y'' = 2a\) ですから、これらを \(y'' - 2y' + 5y\) に代入して、恒等的に \(5t^2\) と等しくなる \(a\)、 \(b\)、 \(c\) を求めれば良いことになります。

これらを頑張って計算すると、 \(a=1\)、 \(b=\cfrac{4}{5}\)、 \(c=-\cfrac{2}{25}\) であることがわかります。

このことによって、特殊解 \(y_p\) は

\[ y_p = t^2 + \frac{4}{5} t - \frac{2}{25} \]

であることがわかります。

多項式の部分を \(y = A_0 t^{n} + A_1 t^{n-1} + \cdots + A_n \) という形で推測する、というルールは、これまでに見てきた指数関数 \(e^{at}\)、 \(\sin at\) 、 \(\cos at\) にかかっていた場合にも適用されます。

例えば、\(r(t) = t^2e^{2t}\) の場合には、 \(y=(at^2+bt+c)e^{2t}\) のように推測します。

さらに、推測特殊解として作った式が、同次式の基本解に含まれる場合 (線形従属の場合)、 \(t\) を線型独立になるまで掛けます。

以上で、特殊解を見つける方法のひとつである、未定係数法について説明しました。

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