フーリエ級数

ここではフーリエ級数、フーリエ係数を導く手順を地味に書き下してみます。級数の収束条件等の話題については別の資料を参考にしてください。

周期 \(2L\) [s] の関数 \(f(t)\) を、同じく周期関数である \(\sin\) と \(\cos\) を使って書き直してみましょう。

周期 \(2L\) [s] の単振動の角周波数 \(\omega\) は \(\omega = \pi / L\) [rad/s] です。

角周波数については、次の記事を参考にしてください。

周波数と角周波数

これの整数倍の角周波数 \(\omega_n = n \pi / L\) [rad/s] の角周波数をもつ \(\sin\) と \(\cos\) の重ね合わせを考えます。\(C\) は定数項とします。

\[ \begin{aligned} f(t) = C &+ a_1 \cos \omega_1 t + a_2 \cos \omega_2 t + \cdots \\ &+ b_1 \sin \omega_1 t + b_2 \sin \omega_2 t + \cdots \end{aligned} \]

ここで計算の都合上は \(n \pi / L\) のままの方が楽なので、\(\omega_n\) は書き下しておきます。

\[ \begin{aligned} f(t) = C &+ a_1 \cos \frac{\pi t}{L} + a_2 \cos \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \\ &+ b_1 \sin \frac{\pi t}{L} + b_2 \sin \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \end{aligned} \]

さて、こうしたときに定数 \(C\) とか、 \(\cos\) や \(\sin\) の項の係数である \(a_1, a_2, \cdots\) とか \(b_1, b_2, \cdots\) を何にすればよいか調べてみましょう。

まず、いきなり区間 \(-L\) から \(L\) で積分してみます。項別に積分できるので、次のようになります。

\[ \begin{aligned} \int^{L}_{-L} f(t) dt = \underbrace{C \int^{L}_{-L} dt}_{\text{定数項の積分}} &+ \underbrace{a_1 \int^{L}_{-L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + a_2 \int^{L}_{-L} \cos \frac{2 \pi t}{L} dt + \cdots }_{\cos \text{の積分}} \\ &+ \underbrace{b_1 \int^{L}_{-L} \sin \frac{\pi t}{L} dt + b_2 \int^{L}_{-L} \sin \frac{2 \pi t}{L} dt + \cdots}_{\sin \text{の積分}} \end{aligned} \]

ここで定数は積分記号の外に出しています。

定数項の積分は単純ですね。

\[ \begin{aligned} C \int^{L}_{-L} dt &= C \Big[t\Big]^{L}_{-L} \\ &= C ( L - (-L) ) \\ &= 2LC \end{aligned} \]

次に \(\cos\) の積分ですが、\(n=1, 2, 3, \cdots \) のとき、

\[ \begin{aligned} \int^{L}_{-L} \cos \frac{n \pi t}{L} dt &= \Big[ \frac{L}{n \pi} \sin \frac{n\pi t}{L}\Big]^{L}_{-L} \\ &= \frac{L}{n \pi} ( \sin \frac{n \pi \cancel{L}}{\cancel{L}} - \sin \frac{n \pi (-\cancel{L})}{\cancel{L}} ) \\ &= \frac{L}{n \pi} ( \sin (n \pi) - \sin (-n \pi) ) \\ &= \frac{L}{n \pi} ( 0 - 0 ) \\ &= 0 \end{aligned} \]

となるので、全て \(0\) です。

\(\sin\) の積分は、\(\cos\) の場合と同様に計算しても別に構わないですが、実は計算するまでもなく結果がわかります。

\(\sin\) は奇関数で、積分区間が \(-L\) から \(L\) までなので、直ちに \(0\) とわかります。

偶関数・奇関数の積分

\(\sin\) は奇関数なので、\(-L\) から \(L\) までの積分はただちに \(0\) とわかります。また、\(\cos\) は偶関数で「偶関数 \(\times\) 奇関数 = 奇関数」なので \(\cos \cdot \sin \) も奇関数になります。 従ってこれも \(-L\) から \(L\) までの積分は \(0\) になります。

偶関数と奇関数の積分

以上から、

\[ \begin{aligned} &\int^{L}_{-L} f(t) dt = 2LC\\ &\therefore C = \frac{1}{2L} \int^{L}_{-L} f(t) dt \end{aligned} \]

これで定数 \(C\) の値が求まりました。

それでは次に、もとの式に \(\cos \frac{\pi t}{L}\) を掛けてから、積分してみましょう。

もう一度、元の式を書くと、次の式です。

\[ \begin{aligned} f(t) = C &+ a_1 \cos \frac{\pi t}{L} + a_2 \cos \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \\ &+ b_1 \sin \frac{\pi t}{L} + b_2 \sin \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \end{aligned} \]

これの全ての項に \(\cos \frac{\pi t}{L}\) を掛けて、\(-L\) から \(L\) まで積分するので、次となります。

\[ \begin{aligned} &\int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{\pi t}{L} dt = \underbrace{C \int^{L}_{-L} \cos \frac{\pi t}{L} dt}_{X} \\ &+ \underbrace{a_1 \int^{L}_{-L} \cos \frac{\pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + a_2 \int^{L}_{-L} \cos \frac{2 \pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + \cdots }_{Y} \\ &+ \underbrace{b_1 \int^{L}_{-L} \sin \frac{\pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + b_2 \int^{L}_{-L} \sin \frac{2 \pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + \cdots}_{Z} \end{aligned} \]

ちょっとややこしくなってきましたね。

でもよくみると、X の部分は上で計算したように \(0\) であることがすぐわかります。

\[ \begin{aligned} X &= C \int^{L}_{-L} \cos \frac{\pi t}{L} dt \\ &= C \cdot 0 \\ &= 0 \end{aligned} \]

また Z の部分は被積分関数が \(\sin \cdot \cos\) という形になっています。 これらは奇関数なので \(-L\) から \(L\) までの積分は \(0\) です。

よって、Y の部分だけが問題になります。

ここで次の関係を使います。

\[ \int_{-L}^{L} \cos \frac{m\pi t}{L} \cos \frac{n \pi t}{L} dt = \begin{cases} L &(m = n) \\ 0 &(m \ne n) \end{cases} \]

加法定理で \(\cos \cdot \cos\) を\(\cos + \cos\) のように変形して、項別に積分すればわかります。

つまり、\(m\) と \(n\) が等しいときのみ \(L\) になり、その他の場合は全て \(0\) ということです。したがって、上の Y の部分は次のように最初の項だけ残して \(0\) になります。

\[ \begin{aligned} Y &= a_1 \int^{L}_{-L} \cos \frac{\pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + a_2 \int^{L}_{-L} \cos \frac{2 \pi t}{L} \cos \frac{\pi t}{L} dt + \cdots \\ &= a_1 \cdot L + a_2 \cdot 0 + a_3 \cdot 0 + \cdots\\ &= a_1 L \end{aligned} \]

よって、結局 もとの式に \(\cos \frac{\pi t}{L}\) を掛けてから、積分した結果は次の通りにシンプルになります。

\[ \begin{aligned} &\int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{\pi t}{L} dt = a_1 L \end{aligned} \]

従って \(a_1\) は次のようにわかります。

\[ a_1 = \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{\pi t}{L} dt \]

同様にもとの式に \(\cos \frac{2 \pi t}{L}, \cos \frac{3 \pi t}{L}, \cdots \) を掛けてから積分することで、次がわかります。

\[ \begin{aligned} a_2 &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{2 \pi t}{L} dt \\ a_3 &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{3 \pi t}{L} dt \\ &\cdots \\ a_n &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{n \pi t}{L} dt \end{aligned} \]

もちろん一般的に \(m\)、\(n\) のまま計算してピンとくるに越したことはありませんが、具体的な数字を当てはめて書き下してみました。

また、ここで \(a_n\) を \(n = 0\) まで拡張してみると、\(\cos 0 = 1\) ですから、

\[ \begin{aligned} a_0 &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{0 \cdot \pi t}{L} dt \\ &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) dt \\ &= 2 \cdot \frac{1}{2L} \int^{L}_{-L} f(t) dt \\ &= 2 C \end{aligned} \]

と変形できるので結局、

\[ C = \frac{a_0}{2} \]

となりました。

ここまでで、定数項 \(C\)、\(\cos \frac{n\pi t}{L}\) の係数 \(a_n\) までわかりました。

次は \(\sin \frac{n \pi t}{L}\) の係数 \(b_n\) ですが、こちらも上とまったく同様に、\(\sin \frac{\pi t}{L}, \sin \frac{2 \pi t}{L}, \cdots\) を掛けて積分する、ということを行えば、次がわかります。

\[ \begin{aligned} b_1 &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \sin \frac{\pi t}{L} dt \\ b_2 &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \sin \frac{2 \pi t}{L} dt \\ &\cdots \\ b_n &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \sin \frac{n \pi t}{L} dt \end{aligned} \]

これで全て計算できました。

見やすいようにもう一度整理しておきましょう。

\(f(t)\) を \(\sin\) と \(\cos\) の重ね合わせで記述 ~ フーリエ級数

周期 \(2L\) の周期関数 \(f(t)\) を定数項 \(C\) と角周波数の整数倍違いの \(\sin\) と \(\cos\) で書くと次の通り。

\[ \begin{aligned} f(t) = C &+ a_1 \cos \frac{\pi t}{L} + a_2 \cos \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \\ &+ b_1 \sin \frac{\pi t}{L} + b_2 \sin \frac{2 \pi t}{L} + \cdots \end{aligned} \]

\(\sum\) を使って書き直すと、これは次と同じ。

\[ \begin{aligned} f(t) = C &+ \sum_{n=1}^{\infty} \Big( a_n \cos \frac{ n \pi t}{L} + b_n \sin \frac{n \pi t}{L} \Big) \end{aligned} \]

1周期内でいきなり積分、\(\cos \frac{n \pi t}{L}\) 倍して積分、\(\sin \frac{n \pi t}{L}\) 倍して積分とすることによって、定数項及び \(\cos\) や \(\sin\) の係数である \(a_n\) とか \(b_n\) が求められる。

\[ \begin{aligned} a_n &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \cos \frac{n \pi t}{L} dt \\ b_n &= \frac{1}{L} \int^{L}_{-L} f(t) \sin \frac{n \pi t}{L} dt \\ f(t) &\sim \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} \Big( a_n \cos \frac{ n \pi t}{L} + b_n \sin \frac{n \pi t}{L} \Big) \end{aligned} \]

上記の級数を \(f(t)\) に対するフーリエ級数といい、\(a_n\)、\(b_n\) をフーリエ係数といいます。

ここで \(\sim\) 記号を使ったのは、上記の級数が収束するかどうかまだ定かではないからです。 収束する場合は \(\sim\) のところは \(=\) で書き、\(f(t)\) のフーリエ級数といいます。

フーリエ級数の収束

そういうわけで、お手持ちの数学のテキスト等ではフーリエ級数の説明では上記の級数と係数の式の他、級数の収束条件が話題になっていると思います。

フーリエ級数の収束性について簡単に書いておくと、\(f(t)\) が (1) 有限個の点を除き一価関数 (2) \(f(t)\) は周期 2L (3) \(f(t)\) と \(f'(t)\) が \((-L, L)\) で区分的に連続、という条件を満たすときに級数が収束します。

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