ベクトルの線積分の例題 (1)
ここではベクトルの線積分の計算問題の解き方のポイントについて、例題を解きながら説明します。
スカラー関数の線積分については「線積分」をみてください。ここではベクトル関数の線積分を扱います。
ベクトル関数 \(\overrightarrow{F}(x,y)=-3x^2\overrightarrow{i}+5xy\overrightarrow{j}\) について、経路 \(C\) における次の線積分を計算せよ。
ただし、\(C\) は放物線 \(y=2x^2\) の \((0,0)\) から \((1,2)\) に沿う曲線とする。
さて、この線積分はどのように計算したらよいでしょうか。
まずは問題を読み解き、下ごしらえからはじめていきましょう。
曲線は \(t\) のパラメータ表示で書く
最初のポイントは、曲線はパラメータ \(t\) で表示するということです。つまり \(x\) や \(y\) を \(t\) の関数として書くということです。
文字は必ずしも \(t\) ではなくても、\(u\) などでも構いません。
曲線 \(C\) は次のグラフの黄色の部分です。
この例題では、線積分を行う経路となる曲線 \(C\) は放物線 \(y=2x^2\) の \((0,0)\) から \((1, 2)\) です。 \(t=x\) とすると、\(0 \le t \le 1\) で \(y = 2t^2\) です。\(x\) を \(t\) に書き換えただけなので簡単ですね。
そもそも「曲線 \(C\) について考える」ということは、\(x\) と \(y\) が曲線の方程式を満たす、ということです。
従って \(x\) と \(y\) は、\(t\) の関数として次のように書けました。
よって、\(x\) と \(y\) を \(t\) でそれぞれ微分すると次のようになります。
\(d\overrightarrow{r}\) は \(d\overrightarrow{r} = dx \overrightarrow{i} + dy \overrightarrow{j} + dz \overrightarrow{k}\)
式を変形するときのポイントは、\(d\overrightarrow{r}\) の意味から \(d\overrightarrow{r} = dx \overrightarrow{i} + dy \overrightarrow{j} + dz \overrightarrow{k}\) と書き下す点です。 今回の問題ではベクトル関数は \(z\) 成分はないので、\(d\overrightarrow{r} = dx \overrightarrow{i} + dy \overrightarrow{j}\) とします。
線積分の計算
それでは、上で説明したポイントを踏まえて、問題の線積分の式を計算していきましょう。
ここでドット \((\cdot)\) は内積を表しています。ベクトルの内積の計算は、成分毎掛け算して足し合わせるのでしたね。
\(\overrightarrow{F}(x,y)=-3x^2\overrightarrow{i}+5xy\overrightarrow{j}\) を成分表示すると \(\langle-3x^2, 5xy\rangle\) です。 同様に \(dx \overrightarrow{i} + dy \overrightarrow{j} = \langle dx, dy \rangle\) です。
次に \(x\) と \(y\) を \(t\) で書きます。繰り返しになりますが、これが曲線 \(C\) を満たすように式変形することになります。
\(dx = dt\) と \(dy = 4t dt\) にも注意をすると次のようになります。
これで、問題の線積分の計算ができました。