定数係数の2階同次線形微分方程式の解法
2階同次線形微分方程式とは
ここでは定数係数の2階同次線形微分方程式を解く方法について説明します。
まず、2階線形微分方程式 (second-order linear differential equation) とは何か?ということですが、次の形の微分方程式をいいます。
独立変数\(x\)と未知関数 \(y\) 、その導関数 \(y'\) および2階導関数 \(y''\) の一次式からなる式です。 \((y'')^2\)などが入ってくると線形ではありません。
ここで特に \(r(x)=0\) のときに同次 (homogeneous) であるといいます。\(r(x)\ne 0\) ならば非同次 (nonhomogeneous) です。
2階同次線形微分方程式は次の形になります。
2階同次線形微分方程式の一般解
ここで、証明は省略しますが次の定理があります。
2階同次線形微分方程式 \(y''+p(x)y'+q(x)y=0\) で \(p(x)\) と \(q(x)\)が開区間 \(I\) で連続とする。 このとき \(y_1(x)\) と \(y_2(x)\) が上式の線形独立な解ならば一般解 \(y(x)\) は次の式で与えられる。
つまり、なんらかの方法で上の微分方程式を満たす線形独立な解が二つ見つかったら、それらを任意定数倍して足し合わせた式が一般解になるということです。
二つの解が定数倍して等しくならないとき、それらは線形独立です。詳しくは 「ロンスキー行列式と同次線形微分方程式の解の独立性」をみてください。
定数係数の2階同次線形微分方程式の一般解
さて、今回はさらに2階同次線形微分方程式で、定数係数の場合を考えます。 つまり \(p\) と \(q\) を定数として次の式となる場合です。
さて、このときにもし、\(y=e^{\lambda x}\) が上式を満たすとします。
\(\lambda\) はギリシャ文字のラムダです。文字は何でもいいのですが、後述の特性方程式の説明では通常ラムダが使われることが多いので、ここでもラムダを使います。
その導関数は \(y'= \lambda e^{\lambda x}, y''=\lambda^2 e^{\lambda x}\) ですから、
\[ \begin{aligned} y''+py'+qy &= 0\\ \lambda^2 e^{\lambda x} + p \lambda e^{\lambda x} + q e^{\lambda x} &= 0\\ \therefore \ (\lambda^2+p\lambda+q) e^{\lambda x} &= 0 \end{aligned} \]
したがって、\(\lambda\) が \(\lambda^2+p\lambda+q = 0 \) を満たすときに、 \(y\) が上記の微分方程式を満たすことがわかります。
\(\lambda^2+p\lambda+q = 0 \) を特性方程式といいます。特性方程式の根によって、 微分方程式の一般解は次のようにわかります。
これは二次方程式の解の公式を使えば、 \({\lambda}^2+p\lambda+q=0\) のとき、解 \(\lambda\) は次の式で求めることができることがわかります。
(1) 特性方程式が異なる二実根 \(\lambda_1\) と \(\lambda_2\) を持つとき
特性方程式で \(p^2 - 4q \gt 0\) のとき、異なる二実根 \(\lambda_1\) と \(\lambda_2\) を持ちます。
\[ \begin{aligned} \lambda_1 &= \frac{-p+\sqrt{p^2-4q}}{2}\\ \lambda_2 &= \frac{-p-\sqrt{p^2-4q}}{2} \end{aligned} \]
\(y_1=e^{\lambda_1 x}\) と \(y_2=e^{\lambda_2 x}\) は線形独立なので、 2階同次線形微分方程式 \(y''+py'+qy=0\) の一般解は次であることがわかります。
\[ y = C_1 e^{\lambda_1 x} + C_2 e^{\lambda_2 x} \]
(2) 特性方程式が重根 \(\lambda\) を持つとき
\(p^2-4q=0\) のとき、特性方程式は重根 \(\lambda = -\displaystyle\frac{p}{2}\) を持ちます。
このとき \(y_1=e^{\lambda x}\) の他、\(y_2 = xe^{\lambda x}\) も微分方程式 \(y''+py'+qy=0\) を満たします。
これは \(y_2'\)と \(y_2''\) を計算して微分方程式に代入すれば確かめられます。
さて、 \(y_1=e^{\lambda x}\) と \(y_2=xe^{\lambda x}\) は問題の微分方程式を満たしてかつ線形独立なので、 2階同次線形微分方程式 \(y''+py'+qy=0\) の一般解は次であることがわかります。
\[ y = (C_1 + C_2 x) e^{\lambda x} \]
\(y_1=e^{\lambda x}\) と \(y_2=xe^{\lambda x}\) が線形独立であることもロンスキー行列式が \(0\) にならないことでわかります。
\[ \begin{aligned} W(y_1, y_2) &=\begin{vmatrix} e^{\lambda x} & xe^{\lambda x}\\ \lambda e^{\lambda x} & (1+\lambda x)e^{\lambda x} \end{vmatrix}\\ &= e^{2\lambda x} \ne 0 \end{aligned} \]
詳細は「ロンスキー行列式と同次線形微分方程式の解の独立性」をみてください。
(3) 特性方程式が虚根 \(\lambda = a \pm b i\) を持つとき
特性方程式が虚根を持つ場合、2階同次線形微分方程式 \(y''+py'+qy=0\) の一般解は次になります。
\[ y = e^{ax}(C_1 \cos bx + C_2 \sin bx) \]
ここで突然 \(\sin\) とか \(\cos\) が出てきましたが、これはなぜでしょうか?
虚根の時も実根のときと同様に線形独立な解の足しあわせとして一般解を求め、 それにオイラーの公式を適用すれば \(\sin\) や \(\cos\) がでてきます。
オイラーの公式
一応計算しておきましょう。
\(\lambda_1 = a+bi\)、\(\lambda_2 = a-bi\) なので、
\[ \begin{aligned} y &= C_1 e^{\lambda_1 x} + C_2 e^{\lambda_2 x}\\ &= C_1 e^{(a+bi)x} + C_2 e^{(a-bi)x}\\ &= C_1 e^{ax} e^{ibx} + C_2 e^{ax} e^{-ibx} \end{aligned} \]
ここでオイラーの公式
を適用すると、
\[ \begin{aligned} &C_1 e^{ax} e^{ibx} + C_2 e^{ax} e^{-ibx}\\ &= C_1 e^{ax}(\cos bx + i\sin bx) + C_2 e^{ax}(\cos bx - i \sin bx)\\ &= e^{ax}\Big[(C_1+C_2)\cos bx + (C_1-C_2)i\sin bx\Big] \end{aligned} \]
ここで \((C_1+C_2)\) と \((C_1-C_2)i\) のところを、改めて任意定数 \(C_1, C_2\) と置き直せば上の式になります。
尚、物理や工学への応用では特に、三角関数の合成の公式で、
\[ \begin{aligned} y &= e^{ax}(C_1 \cos bx + C_2 \sin bx)\\ &= A e^{ax} \sin(bx + \delta) \end{aligned} \]
のように整理すれば、位相 \(\delta\) 違いでかつ、振幅が指数関数的に変化することがわかりやすくなります。