数列の和の公式
数列の和の公式については、次の三つを導き方と一緒に覚えておくと便利です。
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} k &= \frac{n(n+1)}{2}\\
\sum_{k=1}^{n} k^2 &= \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}\\
\sum_{k=1}^{n} k^3 &= \bigg[ \frac{n(n+1)}{2} \bigg]^2
\end{aligned}
\]
ここではそれぞれの導き方をみていきましょう。
\(1+2+\cdots+(n-1)+n\) の和の公式を導く
まずは、
\[
\sum_{k=1}^{n} k = 1 + 2 + \cdots + n = \frac{n(n+1)}{2}
\]
の導き方です。
シグマの記号は縦に大きくて行間が空いてしまうので、ここでは \(S_n = \displaystyle\sum_{k=1}^{n} k\) とおきます。
さて、\(S_n\) を二つ並べて書きます。
\[
\begin{aligned}
S_n &= &1 &+ 2 &+ &\cdots + (n-1) &+ n\\
S_n &= &n &+ (n-1) &+ &\cdots + 2 &+ 1\\
\end{aligned}
\]
片方は \(1, 2, 3, \cdots, n\) と数字が大きくなるように書き、もう片方は逆に \(n, n-1, n-2, \cdots , 2, 1\) という風に数字が小さくなるように書いてならべています。足し算なので、順番を変えても同じですね。
上下を項毎に足し算すると、次のようになります。
\[
\small
\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{ccc:c:c:c:c:c:c:c}
& S_n & = & 1 & + & 2 & + \cdots + & (n-1) & + & n \\
+) & S_n & = & n & + & (n-1) & + \cdots + & 2 & + & 1 \\
\hline
& 2 S_n & = & (n+1) & + & (n+1) & + \cdots + & (n+1) & + & (n+1)
\end{array}
\]
この右辺は \((n+1)\) を \(n\) 回加えたものになっています。ですから、\(n \times (n+1)\) として、
\[
\begin{aligned}
2 S_n &= n (n+1) \\
\\
\therefore \quad S_n &= \frac{n(n+1)}{2}
\end{aligned}
\]
これでひとつめの公式が導けました。
\(1^2+2^2+\cdots+(n-1)^2+n^2\) の和の公式を導く
次に、
\[
\sum_{k=1}^{n} k^2 = 1^2 + 2^2 + \cdots + (n-1)^2 + n^2 = \frac{n(n+1)(2n+1)}{6}
\]
を導きましょう。
このために、畳み込み級数を使います。下でみるように、プラスとマイナスの同様の項が出てきて、
打ち消しあうような級数です。
「畳み込み級数」は「望遠鏡級数」ともいいます。英語は telescoping sum 。
\((k+1)^3 - k^3\) の級数の和を考えます。\(k\) の \(2\) 乗ではなく \(3\) 乗であるところに注意してください。
これを \(k = n, n-1, \cdots , 2, 1\) という逆順に書き下すと次のようになります。
\[
\begin{aligned}
&\sum_{k=1}^{n} [(k+1)^3 - k^3] \\
&= [(n+1)^3 - n^3] + [n^3 + (n-1)^3] + \cdots + [3^3 - 2^3] + [2^3 - 1^3]\\
&= (n+1)^3 - \cancel{n^3} + \cancel{n^3} + \cancel{(n-1)^3} + \cdots + \cancel{3^3} - \cancel{2^3} + \cancel{2^3} - 1^3\\
&= (n+1)^3 - 1
\end{aligned}
\]
\[\therefore \ \sum_{k=1}^{n} [(k+1)^3 - k^3] = (n+1)^3 - 1 \qquad\qquad \cdots (A)\]
打ち消しあうことで、だいぶスッキリしましたね。
さて一方で、\((k+1)^3 - k^3\) は次のようにかけます。
\[
\begin{aligned}
(k+1)^3 - k^3 &= k^3 + 3k^2 + 3k + 1 - k^3\\
&= 3k^2 + 3k + 1
\end{aligned}
\]
\((a+b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3\) です。展開式を忘れそうになったら、力技でやるのもいいですが、
二項定理でみたようにパスカルの三角形を思いだしましょう。
従って、
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} [(k+1)^3 - k^3] &= \sum_{k=1}^{n} (3k^2 + 3k + 1)\\
&= 3 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 3\sum_{k=1}^{n} k + \sum_{k=1}^{n} 1\\
&= 3 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 3 \frac{n(n+1)}{2} + n
\end{aligned}
\]
\[
\therefore \ \sum_{k=1}^{n} [(k+1)^3 - k^3] = 3 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 3 \frac{n(n+1)}{2} + n
\qquad \cdots (B)
\]
上の式 \((A)\) と \((B)\) から、次の関係がわかります。
\[
3 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 3 \frac{n(n+1)}{2} + n = (n+1)^3 - 1
\]
よって、
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} k^2 &= \frac{1}{3} \bigg[ (n+1)^3 - 1 - 3 \frac{n(n+1)}{2} - n \bigg]\\
&= \frac{1}{3} \bigg[ (n+1)^3 - 1 - 3 \frac{n(n+1)}{2} - n \bigg]\\
&= \frac{1}{3} \bigg[ n^3 + 3n^2 + 3n + 1 - 1 - 3 \frac{n(n+1)}{2} - n \bigg]\\
&= \frac{2n^3 + 6n^2 + 6n - 3n^2 - 3n - 2n}{6}\\
&= \frac{2n^3 + 3n^2 + 5n}{6}\\
&= \frac{n (2n^2 + 3n + 1)}{6}\\
&= \frac{n (n+1)(2n+1)}{6}
\end{aligned}
\]
これで二つ目の公式が導けました。
\(1^3+2^3+\cdots+(n-1)^3+n^3\) の和の公式を導く
最後に
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} k^3 = 1^3+2^3+\cdots+(n-1)^3+n^3 = \bigg[ \frac{n(n+1)}{2} \bigg]^2
\end{aligned}
\]
も導いておきましょう。
これのやり方は上と全く同様です。
\((k+1)^4 - k^4\) を考えて、畳み込み級数を作ります。
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} [(k+1)^4 - k^4] &= [(n+1)^4 - \cancel{n^4}] + [\cancel{n^4} - \cancel{(n-1)^4}] + \\
& \cdots + [\cancel{3^4} - \cancel{2^4}] + [\cancel{2^4} - 1] \\
&= (n+1)^4 - 1 \qquad\qquad \cdots (C)
\end{aligned}
\]
これと、
\[
(k+1)^4 - k^4 = 4k^3 + 6k^2 + 4k +1
\]
であることから
\[
\begin{aligned}
\sum_{k=1}^{n} [(k+1)^4 - k^4] &= \sum_{k=1}^{n} (4k^3 + 6k^2 + 4k +1)\\
&= 4 \sum_{k=1}^{n} k^3 + 6 \sum_{k=1}^{n} k^2 + 4 \sum_{k=1}^{n} k + \sum_{k=1}^{n} 1 \qquad \cdots (D)
\end{aligned}
\]
\((C)\) と \((D)\) から式を整理すると、
\[
\begin{aligned}
4 \sum_{k=1}^n k^3 &= (n+1)^4 - 1 - 6 \sum_{k=1}^{n} k^2 - 4 \sum_{k=1}^{n} k - n\\
&= \cdots \\
&= n^2 (n+1)^2\\
\\
\therefore \ \sum_{k=1}^{n} &= \bigg[\frac{n (n+1)}{2} \bigg]^2
\end{aligned}
\]
これで三つ目の公式も導けました。
少し端折りましたが、やり方は上と一緒なので計算間違いに気をつければ大丈夫だと思います。
畳み込み級数のコツ
既に上でみたので、もうお分かりかと思いますが一応、復習として書いておきます。
公式を導くために、畳み込み級数 (プラスとマイナスの項が出てきて打ち消しあえる級数) を作りますが、
\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k^2\) の場合は、べき数がひとつ多い \((k+1)^3 - k^3\) を考えるところがポイントです。
\(\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k^3\) のときは \((k+1)^4 - k^4\) です。
それと、\((k+1)^4\) などを扱うときには、二項定理 を思い出して、
パスカルの三角形などを思い出して、係数を並べていけば間違いは少ないと思います。
以上、数列の和の公式の導き方について説明しました。