定数変化法で非同次微分方程式の特殊解を求める方法
定数変化法とは
定数変化法 (variation of parameters) は、非同次微分方程式の一般解を求めるための、特殊解を見つける有力な方法の一つです。
同次式の一般解に現れる定数を、変数と置き直し、非同次式を満たすようにその変数を決めることによって、特殊解を求めます。
\(\cdots\) というのが、定数変化法のアイデアです。しかし、実際のところ、問題を解く (微分方程式を解く) にあたっては、やれ「定数を変数におきなおして・・・」という作業まで戻って解くのではなく、 定数変化法の考え方で導かれる下の公式を利用することが主になります。
未定係数法よりも適用できる場合が多いので、よりパワフルな方法と言えると思います。
定数変化法
\(p(t)\)、\(q(t)\)、\(r(t)\) は連続な関数として、次の非同次微分方程式を考えます。
\[ y'' + p(t) y' + q(t) y = r(t) \]
これの同次式 \(y'' + p(t) y' + q(t) y = 0\) の二つの線型独立な基本解を \(y_1(t)\)、 \(y_2(t)\) としたとき、 非同次式の特殊解 \(y_p\) は次の式で求められます。
\[ y_p = -y_1 \int \frac{y_2 r}{W} dt + y_2 \int \frac{y_1 r}{W} dt \]
ここで、\(W\) はロンスキアン (Wronskian) で \(W = W(y_1, y_2)\) です。(\(y_1\), \(y_2\) は線型独立なので \(W \ne 0\) です。)
定数変化法の式の導出
なぜ上の式が「定数」の「変化法」なのか、ということは、導出過程をみないとわかりません。
標準的な導出になるので、詳しくはお手持ちの教科書類を確認してください。
非同次微分方程式を次の形とします。
\[ y'' + py' + qy = r \tag{1} \]
これの同次式の一般解を \(y_h = C_1 y_1 + C_2 y_2\) とします。\(y_1\) と \(y_2\) は線型独立な基本解です。
ここで、\(C_1\) と \(C_2\) の部分を \(t\) の関数 \(u_1\)、\(u_2\) と置いて、\((1)\) を満たす特殊解を作れるか考えてみましょう。
\[ y = u_1 y_1 + u_2 y_2 \tag{2} \]
これを一度微分すると
\[ y' = u_1' y_1 + u_1 y_1' + u_2' y_2 + u_2 y_2' \tag{3} \]
ここで、
\[ u_1' y_1 + y_2' y_2 = 0 \tag{4} \]
を満たすように、\(u_1\) と \(u_2\) をとるものとしましょう。 すると、\((3)\) は次のように簡略化されます。
\[ y' = u_1 y_1' + u_2 y_2' \tag{5} \]
これをさらに微分すると
\[ y'' = u_1' y_1' + u_1 y_1'' + u_2' y_2' + u_2 y_2'' \tag{6} \]
\((1)\) に \((2)\)、\((5)\)、\((6)\) を代入して整理すると、
\[ u_1(y_1'' + py_1' + qy_1) + u_2 (y_2'' + py_2' + qy_2) \\ + u_1' y_1' + u_2' y_2' = r \]
となりますが、\(y_1\) と \(y_2\) は同次式の解ですから、\(y_1'' + py_1' + qy_1 = 0\)、 \(y_2'' + py_2' + qy_2 = 0\) です。つまり、\(u_1\) と \(u_2\) にかかる括弧の中はどちらも \(0\) ですから
\[ u_1' y_1' + u_2' y_2' = r \tag{7} \]
\((4)\) と \((7)\) を \(u_1'\)、\(u_2'\) について解きます。
\((4)\ \cdot y_2' - (7) \cdot y_2\) から
\[ u_1' (y_1 y_2' - y_1' y_2) = -y_2 r \tag{8} \]
\(y_1 y_2' - y_1' y_2\) はロンスキアン \(W\) で、
\[ W(y_1, y_2) = \begin{vmatrix} y_1 & y_2\\ y_1' & y_2' \end{vmatrix} \]
ですが、\(y_1\) と \(y_2\) は線形独立な基本解ですから、 \(W \ne 0\) です。
したがって、\((8)\) から
\[ u_1' = -\frac{y_2 r}{W} \]
これを積分すると
\[ u_1 = - \int \frac{y_2 r}{W} dt \tag{9} \]
同様に \(u_2\) についても、
\[ u_2 = \int \frac{y_1 r}{W} dt \tag{10} \]
よって、\((2)\)、\((9)\)、\((10)\) から
\[ y_p = - y_1 \int \frac{y_2 r}{W} dt + y_2 \int \frac{y_1 r}{W} dt \]
となることがわかりました。
実際に問題を解き、定数変化法による解き方に慣れましょう。