逆行列
逆行列の定義
\(n\) 次の正方行列 \(A\) と、同じサイズの正方行列 \(B\) があり、
\[ A B = I \]
かつ
\[ B A = I \]
を満たす時、\(B\) を \(A\) の逆行列 (inverse matrix) といいます。 ここで \(I\) は単位行列です。 \(A\) の逆行列を \(A^{-1}\) と書きます。 逆行列を持つ行列を正則行列 (invertible matrix または nonsingular matrix) といいます。
尚、\(A\) は \(B\) の逆行列でもあります。
こうした関係は、実数の掛け算 \(a \cdot b = 1\) のとき \(b = a^{-1}\) であり、\(b\) を \(a\) の逆数と呼ぶことに対応しています。
逆行列の一意性
行列 \(B\) と行列 \(C\) が、どちらも \(A\) の逆行列であるならば、\(B = C\) です。
なぜならば、\(B\) と \(C\) は \(A\) の逆行列であるので、特に \(BA = I\)、\(AC = I\) を満たすので、
\[ \begin{aligned} B &= B I\\ &= B \underbrace{(AC)}_{=I}\\ &= \underbrace{(BA)}_{=I} C\\ &= C \end{aligned} \]
となるので、\(B = C\) です。
行列の積の逆行列
行列 \(A\) と行列 \(B\) が正則で、同じサイズであるとき、次を満たします
\[ (AB)^{-1} = B^{-1} A^{-1} \]
なぜなら、\((AB)^{-1}\) は \(AB\) の逆行列ですから、
\[ (AB)^{-1} AB = I \]
です。この両辺に右から \(B^{-1}\) をかけると
\[ \begin{aligned} (AB)^{-1} A \underbrace{B B^{-1}}_{=I} &= B^{-1}\\ (AB)^{-1} A &= B^{-1}\\ \end{aligned} \]
であり、さらに右から \(A^{-1}\) をかけると
\[ \begin{aligned} (AB)^{-1} \underbrace{A A^{-1}}_{=I} &= B^{-1} A^{-1}\\ \therefore \ \ (AB)^{-1} &= B^{-1} A^{-1} \end{aligned} \]
となります。