曲面 \(z=g(x,y)\) の法線
ここでは以前の記事「面積素とパラメータ (曲面 z=g(x,y) の場合)」に引き続き、 \(xyz\) 直交座標系で
\[ z=g(x,y) \]
で表される曲面 \(S\) を考えます。
この曲面 \(S\) は、\(S\) 上で微分可能であるために、滑らかな曲面を考えます。
この曲面上の点の位置ベクトルは
\[ \overrightarrow{r} = x \overrightarrow{i} + y \overrightarrow{j} + g(x,y) \overrightarrow{k} \]
です。成分表示で書けば \(\overrightarrow{r} = \langle x, y, g(x,y) \rangle\) です。
さて、この曲面上のある点 \(P\) を \(\overrightarrow{r} = \langle x, y, g(x,y) \rangle\) とします。
点 \(P\) から \(x\) 方向に微小量 \(\Delta x\) だけ動いた点を 点 \(Q\)、 点 \(P\) から \(y\) 方向に微小量 \(\Delta y\) だけ動いた点を点 \(S\) とします。
すると、点 \(Q\)、点 \(S\) はそれぞれ、次のように書けます。
\[ \begin{aligned} \text{\small{点}}Q&: \overrightarrow{r}(x+\Delta x, y) &= \overrightarrow{r}(x,y) + \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \Delta x\\ \text{\small{点}}S&: \overrightarrow{r}(x, y+\Delta y) &= \overrightarrow{r}(x,y) + \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} \Delta y \end{aligned} \]
つまり点 \(P\) を基準として、点 \(Q\)、点 \(S\) はそれぞれ、\(\displaystyle\frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \Delta x\)、 \(\displaystyle\frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} \Delta y\) だけ移動した点にあります。
これでベクトル \(\overrightarrow{PQ}\) の向きは \(\displaystyle\frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x}\) で、 ベクトル \(\overrightarrow{PS}\) の向きは \(\displaystyle\frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y}\) であることがわかりました。
法線は \(\overrightarrow{PQ}\) と \(\overrightarrow{PS}\) 両方に垂直な向きは法線方向になります。
従って
\[ \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \times \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} \]
は法線方向を向きます。
大きさを 1 にするために、そのベクトルの大きさそのもので割ると、単位法線ベクトル \(\overrightarrow{n}\) がわかります。
\[ \overrightarrow{n} = \frac{\cfrac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \times \cfrac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y}}{\Big\| \cfrac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \times \cfrac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} \Big\|} \]
ここで、
\[ \overrightarrow{r} = x \overrightarrow{i} + y \overrightarrow{j} + g(x,y) \overrightarrow{k} \]
であることを思い出すと、もう少し式変形が進められます。
\(\overrightarrow{r}\) を \(x\) や \(y\) で偏微分したベクトルは、 成分をそれぞれ \(x\) や \(y\) で偏微分することでもとまるので、次のようになります。
\[ \begin{aligned} \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} &= \overrightarrow{i} + \frac{\partial g}{\partial x} \overrightarrow{k}\\ \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} &= \overrightarrow{j} + \frac{\partial g}{\partial y} \overrightarrow{k}\\ \end{aligned} \]
これらのベクトル積は次のように計算できます。
このベクトルの大きさは、成分を二乗して足し合わせたものの平方根で、次のようにかけます。
\[ \Big| \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial x} \times \frac{\partial \overrightarrow{r}}{\partial y} \Big| = \sqrt{\Big(\cfrac{\partial g}{\partial x}\Big)^2 + \Big(\cfrac{\partial g}{\partial y}\Big)^2 + 1} \]
上で得られた結果を代入すると、曲面 \(S (z=g(x,y))\) の単位法線ベクトル \(\overrightarrow{n}\) は次の式になることがわかります。
この式はしばしば \(p\) と \(q\) を使って次のように書かれます。
曲面 \(z=g(x,y)\) の単位法線ベクトルは \(p = \displaystyle\cfrac{\partial g}{\partial x}\)、\(q = \displaystyle\cfrac{\partial g}{\partial y}\) として
最初はあまり簡単になったように見えないかもしれませんが、実際に問題を解いて使ってみると、とても簡単に使えることがわかると思います。