逆変形と基本行列

基本行列とは、単位行列にひとつの基本変形を行ったものです。

単位行列と基本行列」でみたように、 基本行列には \(P_n(i,j)\)、\(Q_n(i:3)\)、\(R_n(i,j;c)\) の三種類があります。

行基本変形を考えます。

\(P_n(i,j)\) は \(n\)次の単位行列の \(i\) 行目と \(j\) 行目を入れ替えて得られる基本行列です。また、この基本変形を元に戻すように、 もう一度 \(j\) 行目と \(i\) 行目を入れ替えれば元の単位行列に戻ります。

つまり、

\[ P_n (i, j) P_n(j, i) = I \]

かつ

\[ P_n(j, i) P_n(i, j) = I \]

が成り立ちます。

実際のところ \(P_n(i,j) = P_n(j,i)\) ですが、ここでは「元に戻す」点を強調するために、添字を入れ替えています。

\(Q_n(i;c)\) は \(n\)次の単位行列の \(i\) 行目を \(c\) 倍して得られる基本行列です。また、この基本変形を元に戻すように、 もう一度 \(i\) 行目を \(1/c\) 倍すると元の単位行列に戻ります。\(1/c\) 倍した行を \(c\) 倍すると考えても同じです。

つまり、

\[ Q_n (i;c) Q_n(i;1/c) = I \]

かつ

\[ Q_n(i;1/c) Q_n(i;c) = I \]

が成り立ちます。

\(R_n(i,j;c)\) は \(n\)次の単位行列の \(i\) 行目に \(j\) 行目を \(c\) 倍して足し合わせて得られる基本行列です。また、この基本変形を元に戻すように、 もう一度 \(i\) 行目に \(j\) 行目の \(-c\) 倍を足し合わせれば、元の単位行列に戻ります。\(-c\) 倍した行を \(c\) 倍して元に戻すと考えても同じです。

つまり、

\[ R_n (i,j;c) R_n(i,j;-c) = I \]

かつ

\[ R_n(i,j;-c) R_n(i,j;c) = I \]

が成り立ちます。

つまり、どの基本変形の場合も、実施した基本変形を戻す操作が存在します。ある基本変形を元に戻す変形を 逆変形 (inverse transformations) または 逆操作 (inverse operations) といいます。

ある基本変形に対する基本行列を \(E\) とし、その変形に対する逆変形を表す基本行列を \(E_0\) と書くと、常に

\[E E_0 = I\]

かつ

\[E_0 E = I\]

が満たされます。

つまり、\(E\) に対する逆行列は \(E_0\) となります。(また、\(E_0\) に対する逆行列も \(E\) とも言えます。) したがって、基本行列 \(E\) は常に正則です。

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