スカラー場の勾配 問題 (1)

問題 r=xi+yj+zk\overrightarrow{r} = x \overrightarrow{i} + y \overrightarrow{j} + z \overrightarrow{k} というベクトルに対して、 その大きさを r=rr = | \overrightarrow{r} | とする。このとき、次の (A) から (D) のうち、正しいものを選べ。

(A) r=rr2\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r^2}

(B) r=rr\nabla r = - \cfrac{\overrightarrow{r}}{r}

(C) r=rr3\nabla r = - \cfrac{\overrightarrow{r}}{r^3}

(D) r=rr\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r}

\nabla勾配ベクトル の演算子で、次のように定義されます。

=xi+yj+zk \nabla = \frac{\partial}{\partial x} \overrightarrow{i} + \frac{\partial}{\partial y} \overrightarrow{j} + \frac{\partial}{\partial z} \overrightarrow{k}

スカラー関数に作用して、そのスカラー関数の勾配ベクトルを求めます。

rr は原点からの距離を表す関数で、r=x2+y2+z2r = \sqrt{x^2 + y^2 + z^2} です。

rrxxyyzz それぞれで偏微分すると、次のようになります。

rx=12(x2+y2+z2)122x=xx2+y2+z2=xr \begin{aligned} \frac{\partial r}{\partial x} &= \frac{1}{2} (x^2+y^2+z^2)^{-\frac{1}{2}} \cdot 2x\\ &= \frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\\ &= \frac{x}{r} \end{aligned}

yyzz に対しても同様に計算して、ry=yr\cfrac{\partial r}{\partial y} = \cfrac{y}{r}rz=zr\cfrac{\partial r}{\partial z} = \cfrac{z}{r} となります。

ゆえに、rr の勾配ベクトルは次のようになります。

r=rxi+ryj+rzk=xri+yrj+zrk=xi+yj+zkr=rr \begin{aligned} \nabla r &= \frac{\partial r}{\partial x} \overrightarrow{i} + \frac{\partial r}{\partial y} \overrightarrow{j} + \frac{\partial r}{\partial z} \overrightarrow{k} \\ &= \frac{x}{r} \overrightarrow{i} + \frac{y}{r} \overrightarrow{j} + \frac{z}{r} \overrightarrow{k}\\ &= \frac{x \overrightarrow{i} + y \overrightarrow{j} + z \overrightarrow{k}}{r}\\ &= \frac{\overrightarrow{r}}{r} \end{aligned}

よって、答えは(D) です。

r=rr\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r} の意味は?

この問題文の関係、つまり r=rr\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r} はどういうことか、少し考えてみましょう。

まず、r=xi+yj+zk\overrightarrow{r} = x \overrightarrow{i} + y \overrightarrow{j} + z \overrightarrow{k} は、 次のグラフのように原点から放射状、外向きに向かうベクトル場を作ります。

ベクトル r\overrightarrow{r} の大きさは、原点からの距離に比例して大きくなります。

rr=rr\cfrac{\overrightarrow{r}}{r} = \cfrac{\overrightarrow{r}}{| \overrightarrow{r} | } というベクトルは、 ベクトル r\overrightarrow{r} 向きの単位ベクトル (大きさ 1 のベクトル) を表します。

一般的にベクトル a\overrightarrow{a} があるときに、そのベクトル自身の大きさ a|\overrightarrow{a}| で割ったベクトルは、 そのベクトル向きの単位ベクトルになります。例えば、大きさ 5 のベクトルなら、5 で割れば大きさ 1 のベクトルになりますよね。

さて、この問題で勾配ベクトルをとるスカラー関数は、原点からの距離を表す関数 r(x,y,z)=x2+y2+z2r(x,y,z) = \sqrt{x^2 + y^2 + z^2} ですから、 等位面は球面になります。

勾配ベクトルは等位面に対して垂直方向を向き、そのスカラー関数の値を最も増加させる向きを示します。

つまり r=rr\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r} という結果は、 『空間上の点 A から、どの方向に動いたら最も効率よく rr が増えるか (rr の勾配が急であるか) 』 というと、それは 『半径方向に動いた時であり、そのときの増加割合は 1 である』 ということを意味しています。

「増加割合は1である」というところは、半径方向に 1 動いたら、半径が 1 増加する、ということですから、当然のことですね。

この状況を理解していれば r=rr\nabla r = \cfrac{\overrightarrow{r}}{r} という関係は、とても自然な結論であることがよくわかると思います。

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