オイラーの微分方程式の例題 (1)

次の微分方程式を解け。

\[x^2y''+3xy'-3y=0\]

※ \(x \gt 0\) とする。

次の形式の微分方程式を、オイラーの微分方程式といいます。

\[ x^2y''+axy'+by=0 \]

\(a, b\) は実数。 \(x \gt 0\)。このとき特性方程式は次式。

\[ \lambda^2 + (a-1) \lambda + b = 0 \]

オイラーの微分方程式については「オイラーの微分方程式」をみてください。

問題の微分方程式はオイラーの微分方程式ですね。

オイラーの微分方程式なので、特性方程式を解くと次のようになります。

\[ \begin{aligned} \lambda^2 + (3-1) \lambda - 3 &= 0\\ \lambda^2 + 2\lambda - 3 &= 0\\ (\lambda+3)(\lambda-1) &= 0\\ \therefore \ \lambda_1 = -3, \lambda_2 = 1 \end{aligned} \]

特性方程式で異なる二実根をもつオイラーの微分方程式ですので、一般解は次の式で得られます。

オイラーの微分方程式で特性方程式が異なる二実根 \(\lambda_1\) と \(\lambda_2\) を持つとき

\[ y = C_1 x^{\lambda_1} + C_2 x^{\lambda_2} \]

したがって、問題の微分方程式の一般解は \(C_1, C_2\) を任意定数として次となります。

\[ y = \frac{C_1}{x^3} + C_2 x \]

\(x=e^t\) と変数変換すると定数係数にできる

上ではオイラーの微分方程式では、特性方程式はこれですよ、とわかっているものとしていきなり使いました。

しかしながら、\(x=e^t\) とおいて、変数変換することによって、 定数係数の2階同次線形微分方程式として解くこともできます。

定数係数の2階同次線形微分方程式については、「定数係数の2階同次線形微分方程式の解法」を参考にしてください。

\(x \gt 0\) なので \(x=e^t\) で変数を \(x\) から \(t\) に変換します。

すると \(t = \ln x\) なので \(x\)で微分すると

\[ \frac{dt}{dx}=\frac{1}{x} \]

さて、問題の微分方程式に \(xy'=x\displaystyle\frac{dy}{dx}\) があるので、 それをチェーンルールで \(t\) の微分に変換すると次のようになります。

\[ \begin{aligned} x\frac{dy}{dx} &= x \frac{dy}{dt} \frac{dt}{dx}\\ &= x \frac{dy}{dt} \frac{1}{x}\\ &= \frac{dy}{dt} \end{aligned} \]

同様に

\[ \begin{aligned} x^2 \frac{d^2y}{dx^2} &= x^2 \frac{d}{dx} \Big( \frac{dy}{dx} \Big) \\ &= x^2 \frac{d}{dx} \Big( \frac{dy}{dt} \frac{dt}{dx} \Big)\\ &= x^2 \frac{d}{dx} \Big( \frac{dy}{dt} \frac{1}{x} \Big) \\ &= x^2 \Big[ \frac{d}{dx}\Big(\frac{dy}{dt}\Big) \frac{1}{x} + \frac{dy}{dt} \Big(-\frac{1}{x^2}\Big) \Big] \end{aligned} \]

ここで \([ \ ]\) 内の一項目は次のように変形できます。

\[ \begin{aligned} \frac{d}{dx}\Big(\frac{dy}{dt}\Big) \frac{1}{x} &= \frac{d^2y}{dt^2} \frac{dt}{dx} \frac{1}{x}\\ &= \frac{1}{x^2} \frac{d^2y}{dt^2} \end{aligned} \]

したがって、

\[ \begin{aligned} x^2 \frac{d^2y}{dx^2} &= x^2 \Big[ \frac{d}{dx}\Big(\frac{dy}{dt}\Big) \frac{1}{x} + \frac{dy}{dt} \Big(-\frac{1}{x^2}\Big) \Big]\\ &= x^2 \Big[ \frac{1}{x^2} \frac{d^2y}{dt^2} - \frac{1}{x^2}\frac{dy}{dt} \Big]\\ &= \frac{d^2y}{dt^2} - \frac{dy}{dt} \end{aligned} \]

よって問題の微分方程式は、\(t\) を変数として次のように書直せます。

\[ \begin{aligned} \underbrace{\frac{d^2y}{dt^2} - \frac{dy}{dt}}_{x^2y''} + 3 \underbrace{\frac{dy}{dt}}_{xy'} - 3y &= 0\\ \therefore \ y'' + 2y' - 3y &= 0 \end{aligned} \]

これは定数係数の2階同次線形微分方程式です。

定数係数の2階同次線形微分方程式については「定数係数の2階同次線形微分方程式」をみてください。

特性方程式は

\[ \lambda^2+2\lambda - 3 = 0\]

であり、異なる二実根 \(\lambda_1 = -3\) と \(\lambda_2 = 1\) を持ちます。

したがって、この微分方程式の一般解は次の通りです。

\[ y = C_1 e^{-3t} + C_2 e^t \]

ここで \(t = \ln x\) でしたから、\(t\) から \(x\) に戻すと次式を得ます。

\[ y = \frac{C_1}{x^3} + C_2 x \]

\(e^{t}=e^{\ln x}\) というのは、一見ややこしそうに見えますね。でも \(\ln\) は自然対数の底である \(e\) (ネイピア数) を底とする対数のことですから、\(\ln = \log_e\) です。 つまり、 \(\ln x\) という数は、「\(e\) を \(\ln x\) 乗すると \(x\) になる数」のことです。 ですから、\(e^{\ln x}\) は意味がわかっていれば直ちに \(x\) であるとわかります。

対数関数

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