三角関数の有理式の積分 例題 (2)
次の不定積分を求めよ。
\[ \int \frac{\sin x}{1+ \sin x} dx \]
こちらも「\(\sin\) と \(\cos\) の有理式の積分 例題 1」と同じ方針で、 \(t = \tan(x/2)\) とおいて、単純な \(t\) の有理式に変形して積分しましょう。
\(t = \tan\dfrac{x}{2}\) とおくと、
ですから、
\[ \begin{aligned} 1 + \sin x &= \frac{2t}{1+t^2} + 1\\ &= \frac{t^2 + 2t + 1}{1+t^2}\\ &= \frac{(t+1)^2}{1+t^2} \end{aligned} \]
です。したがって、問題の積分は \(t\) を使って
\[ \begin{aligned} \int \frac{\sin x}{1+\sin x} dx &= \int \frac{2t}{1+t^2}\frac{1+t^2}{(1+t)^2}\frac{2}{1+t^2} dt\\ &= 4 \int \frac{t}{(1+t^2)(t+1)^2} dt \end{aligned} \]
とかけます。
被積分関数を部分分数分解すると、
\[ \frac{t}{(1+t^2)(t+1)^2} = \frac{1}{2}\Big\{ \frac{1}{1+t^2} - \frac{1}{(t+1)^2} \Big\} \]
となります。
この場合、部分分数分解するには
\[ \frac{t}{(1+t^2)(t+1)^2} = \frac{A t + B}{1+t^2}+\frac{C}{(t+1)^2}+\frac{D}{t+1} \]
とおいて、\(A\)、\(B\)、\(C\)、\(D\) を決めます。詳しくは「部分分数分解の方法」をみてください。
したがって、
\[ \begin{aligned} 4 \int \frac{t}{(1+t^2)(t+1)^2} dt &= 4 \int \frac{1}{2}\Big\{ \frac{1}{1+t^2} - \frac{1}{(t+1)^2} \Big\} dt\\[1.2em] &= 2 \Big\{ \tan^{-1} t + \frac{1}{t + 1} \Big\} + C\\[1.2em] &= 2 \Big\{ \frac{x}{2} + \frac{1}{\tan(x/2) + 1} \Big\} + C\\[1.2em] &= x + \frac{2}{\tan(x/2) + 1} + C \end{aligned} \]
となります。(\(C\) は積分定数)
\[\int \frac{1}{x^2 + 1} dx = tan^{-1} x + C\]
という関係については、「逆三角関数の導関数」をみてください。
\(\tan^{-1} t\) を \(x\) に戻すところは、「\(\tan^{-1} A\)」というものが、「\(\tan\) を \(A\) にする角度」という意味である、ということを理解していれば、 \(\tan^{-1} \tan(x/2)\) という値は 「\(\tan\) を \(\tan x/2\) にする角度」という意味であることから、直ちに \(x/2\) であることがわかります。
- 三角関数の有理式の積分 例題(1)
- 三角関数の有理式の積分 例題(2)