複素形フーリエ級数 例題(1)
次の関数の複素形フーリエ級数に展開せよ。
\[ f(x) = x \ \ \ \small{(-\pi \lt x \lt \pi)} \]
\([-\pi, \pi]\) で定義された関数 \(f(x)\) の複素形フーリエ級数は、次の式で表されます。
\[ \begin{aligned} f(x) &= \sum_{n = -\infty}^{\infty} c_n e^{inx}\\ c_n &= \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x) e^{-inx} dx \end{aligned} \]
まず、\(n=0\) のとき
\[ \begin{aligned} c_0 &= \frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} x dx\\ &= 0 \end{aligned} \]
です。(被積分関数が \(x\) であり、これは奇関数なので、直ちにわかります。)
\(n\ne0\) のときは、
\[ \begin{aligned} c_n &= \frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} x e^{-inx} dx\\[1.4em] &= \frac{1}{2\pi} \Big\{ \Big[-\frac{1}{in} x e^{-inx}\Big]_{-\pi}^{\pi} - \int_{-\pi}^{\pi} -\frac{1}{in} e^{-inx} dx \Big\}\\[1.4em] &= \frac{1}{2\pi} \Big\{ -\frac{1}{in} (\pi e^{-in\pi} + \pi e^{in\pi}) + \frac{1}{in} \int_{-\pi}^{\pi} e^{-inx} dx \Big\}\\[1.4em] &= \frac{1}{2\pi} \Big\{ -\frac{\pi}{in} (e^{-in\pi} + e^{in\pi}) + \frac{1}{in} \Big[ -\frac{1}{in} e^{-inx} \Big]_{-\pi}^{\pi} \Big\}\\[1.4em] &= \frac{1}{2\pi} \Big\{ -\frac{\pi}{in} \cdot 2(-1)^n - \frac{1}{i^2n^2} (e^{-in\pi} - e^{in\pi}) \Big\}\\[1.4em] &= \frac{1}{2\pi} \Big\{ \frac{2\pi (-1)^n}{n} i + \frac{1}{n^2} \cdot 0 \Big\}\\[1.4em] &= \frac{(-1)^n}{n} i \end{aligned} \]
となります。
ちなみに、上の計算では \(e^{in\pi} = \cos n\pi + i \sin n\pi \)、\(e^{-in\pi} = \cos n\pi - i \sin n\pi \) とか、\(\cos n\pi = (-1)^n\) といった関係を使って、式を簡単にしていっています。
以上から、問題の関数の複素形フーリエ級数は
\[ f(x) = i \sum_{ \begin{subarray}{l} n=-\infty\\ n \ne 0 \end{subarray}}^{\infty} \frac{(-1)^n}{n} e^{inx} \]
となります。
- 複素形フーリエ級数 例題(1)
- 複素形フーリエ級数 例題(2)
- 複素形フーリエ級数 例題(3)