余因子展開による行列式の計算 例題(1)
次の行列式の値を求めよ。
\[ \begin{vmatrix} 1 & 3 & 2\\ 3 & 3 & 1\\ 5 & 0 & 1 \end{vmatrix} \]
サラスの公式で展開して計算しても、もちろん行列式は求まります。 でも、ここでは余因子展開を利用してみましょう。
その前に、まずは行列式の性質を利用して、行列式を単純化しましょう。
\(3\) 行 \(2\) 列目に \(0\) があり、さらに \(2\) 列目の数値が \(1\) 行目と \(2\) 行目が同じ \(3\) であることに着目します。 \(2\) 行目から\(1\) 行目を引くと
\[ \begin{vmatrix} 1 & 3 & 2\\ 3 & 3 & 1\\ 5 & 0 & 1 \end{vmatrix} = \begin{vmatrix} 1 & 3 & 2\\ 2 & 0 & -1\\ 5 & 0 & 1 \end{vmatrix} \]
となります。
「\(2\) 行目から\(1\) 行目を引」いて良いのはなぜでしょうか。行列 \(A=[a_{ij}]\) の \(1\) 行目を \(c\) 倍して \(2\) 行目に足した行列式を考えます。すると、
\[ \begin{aligned} &\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} + c a_{11} & a_{22} + c a_{12} & a_{23} + c a_{13}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}\\[1.4em] &= \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix} + \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ c a_{11} & c a_{12} & c a_{13}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}\\[1.4em] &= \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix} + c \underbrace{\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}}_{\text{1行目と2行目が等しいから}0}\\[1.4em] &= \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13}\\ a_{21} & a_{22} & a_{23}\\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}\\[1.4em] &= \det(A) \end{aligned} \]
となり、元の行列式 \(\det(A)\) と等しくなります。\(2\)行目から\(1\)行目を引くのは、 \(c=-1\) の場合に当たります。
そこで、\(2\)列目に沿って、余因子展開します。
\[ \begin{aligned} \begin{vmatrix} 1 & 3 & 2\\ 3 & 3 & 1\\ 5 & 0 & 1 \end{vmatrix} &= \begin{vmatrix} 1 & \colorbox{yellow}{3} & 2\\ \colorbox{aqua}{2} & 0 & \colorbox{aqua}{-1}\\ \colorbox{aqua}{5} & 0 & \colorbox{aqua}{1} \end{vmatrix}\\ &= \colorbox{yellow}{3} \cdot (-1)^{1+2} \ \begin{vmatrix} \colorbox{aqua}{2} & \colorbox{aqua}{-1}\\ \colorbox{aqua}{5} & \colorbox{aqua}{1} \end{vmatrix}\\ &= -3 \cdot \{2 \cdot 1 - (-1) \cdot 5\}\\ &= -21 \end{aligned} \]
これで行列式が求まりました。
このように、余因子展開をする場合は特に、同じ行、または、同じ列になるべく \(0\) を含むように変形してから展開すると、計算は楽になります。